一般の人こそ、ChatGPTの裏側である「大規模言語モデル」を知ることが大切
ハウツーを教えてもらって、利用するだけでなく「裏の仕組み」も知っておくと、もっと使いこなせる。学生なら、ちょっとだけ頑張れば、今学んでいる数学や、関数の概念の意味がわかってくる、ワクワクする世界です
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今日は「ChatGPT」の使い方ではなく、その裏側にある「大規模言語モデル」について学ぶことの大切さについて考えてみたいと思います。
どんな分野でも、もう少しだけ奥に踏み込むことで、面白くなるし、応用ができるようになるし、使い方も上手になります。
そして何よりも「楽しく」なるはずです。
キャズム理論と、大規模言語モデル
キャズム理論は、ご存知でしょうか?
キャズム理論とは、ジェフリー・ムーアというハイテク・マーケティングに携わってきた人が提唱した「新技術を伴った製品、サービス」が世の中に浸透していく様子を説明したものです。
その中で有名な図が、以下のものです。
イノベーターとは?
新規のプロダクトは、最初「新しいもの好き」や「テクノロジーの未来を信じている」イノベーターと呼ばれる人々が導入します。このタイプの人々は、第1世代、第2世代のiPhone、iPadの第1世代、Apple Watchの第1世代を「利用用途が、はっきりしなくても」購入する人々です。
あなたの近くを探せば、「新しい技術が搭載された何か?」を喜んで購入している人はいませんか?そして、不便していても、喜んで、自分で解決策を考えるような人がいると思います。
その人は、「イノベーター」と呼ばれる人種です。このイノベーターは、人口比では3%以下です。ものすごく少ないです。
ChatGPTで考えてみると、現在のような「Chat型」になる前の「Playground」の状態の頃から使っている人です。あるいは、APIと呼ばれるプログラミングを駆使しないと使えない状態でも、使っていた人でしょう。
アーリーアダプター
英語では、Early Adopterと書きます。Earlyは早期という意味で、Adopter は採用者という意味です。このことから、アーリーアダプターを日本語に直訳すれば、「早期採用者」となります。
彼らは、新技術、革新的な技術(あるいはサービス)の将来性について敏感です。単純に新しいだけでなく、「これは、将来すごいことになるぞ」という期待感があると、採用します。
一方で、マジョリティーとは違います。マジョリティー(大多数の人々)は、実際に役立つことが証明されないと動きません。
iPhone、iPad、Apple Watchの使い道が見えてきて、将来性が見えてきた時(まだ確定はしていない)、積極的に採用します。そして、特定の解決したい問題や、ビジョンの前進につながるか?を自分で判断します。
また、彼らは「役立つなら、プレミアム(割り増し)価格を払ってもいい」と考える人々です。
ChatGPTにおいては、「ChatGPTのChat形式の使いやすいユーザーインターフェース」で、いろんなことを試してみて、これは面白い!こんなことができる、あんなことができる!と発見し、さらに「業務で使おう」といういう人々です。
私たちの場合、文章作成に使ってみて、あれこれ工夫することで「これは使える!」と確信を得て、使い始めました。私たちは、アーリーダプターと言えます。
キャズム
キャズムは、「隙間」や「ギャップ」と呼ばれています。大きな谷のようなものです。確信的な商品、サービスは
イノベーター
アーリーアダプター
に採用されても、その先に進めないことが多々あります。
例えば、「スマート家電」が良い例です。ずいぶん前から、スマホが鍵になれるし、家中の家電を音声操作できるようになっているのに、それほど普及していません。
音声ユーザーインターフェースを使うには、それなりに学習が必要だからかもしれません。Siriに仕事を頼むには、伝え方を練習しておかないと、うまく使えません。意外に面倒です。それなら、ポケットにあるiPhoneを取り出して操作した方が便利です。
次の「メインストリーム(大衆が受け入れてくれる世界)」進む前には、大きなギャップがあります。そのギャップとは・・・・を知りたい人は、ぜひ調べてみてください。
あれこれ、提唱されています。
アーリーマジョリティ、レイトマジョリティー
彼らは「十分に役立つ」と証明されてから動きます。大多数の人にとって「明らかに、役立つもの」だとわかった時に使います。
この際、市場にはたくさんの競合がいて「価格競争」や「性能競争」をしています。用途別のものがあり、どれも必要な性能を満たせている状態の時に、製品サービスを採用します。
レイトマジョリティは、どちかというと「コスパ重視」の傾向があると言われています。
とにかく、ここの人口が動き始めると、一気に「確信的なものが新常識」と変わっていきます。
ラガード
laggard と書きます。これは、「ノロマ」や「後発企業」の意味があります。ぐずぐずしている人という意味です。
このタイプの場合、「ガラケーが買えなくなるまで、ガラケーを使っている」人です。買い換える時も、壊れた時です。新しいものを採用して困るよりも、今のままが良い人々(アーリーアダプターからみると、不便しているように見えても)です。
もし、ChatGPTが、本格的に広がった場合、「Microsoft製品を買ったら、勝手についてきた。しかも使うつもりがないけど、使わざるを得ない状態だった」という時に使います。
あるいは、問い合わせ先が、電話受付やメールの問い合わせがなく「ChatGPTのような生成AIのみ」の場合です。
ChatGPTは、これからキャズムを超えていくか?
ChatGPT単体ではなく、ChatGPTの裏側で使われている「大規模言語モデル」と呼ばれるものが、キャズムを超えていくと思います。
ChatGPT自体は、一部のユーザーが喜んで使う「マニアックな道具」になると予想しています(外れるかもしれませんが、答えは合わせは来年あたりにしましょう)。ChatGPTは「使える人にとっては、超強力なツール」になりますが、そのためには「習得」や「トレーニング」が必要になります。そのトレーニングをしてもOKと思える人しか、使わないと思われます。
一方で、ChatGPTの裏側の「大規模言語モデル」は、特定の用途に特化して使われると思います。
例えば、ドキュメントアプリの横に「要約」ボタンがついていて、押すと「要約を生成してくれるが、その裏に大規模言語モデルが動いている」などです。
他にも、企業の電話サポートや、メールサポートのソフトウェアにて、「メールの内容に合わせて、自動返信」を作ってくれる。あるいは、いくつかの自動返信候補を出してくれるようになる。そこから1つを選んで、編集して返信するなどができるようになります。
完全に自動化までにはならないと思いますが、随所で使われるようになります。
インターネットの仕組みも面白いです、それと同じです。
ちなみに、インターネットも普及し始めたときは、「ほとんどの人が、何これ?美味しいの?」状態でした。
ところが、今や「インフラ(社会基盤)」です。
驚きですよね。
じゃあ、この必要不可欠になっているインターネットの裏側は?と言われれば、多くの人は知らないと思います。でも、少しで良いので、知ってみると、かなり面白いです。
世界の見え方が変わるし、日々のニュースで、「あ!」という気づきもあります。
同様に、ChatGPTの裏側にある「大規模言語モデル」の仕組みを、一歩踏み込んで知るのは、かなり刺激的です。何かに直接役立つわけではないかもしれませんが、いつかどこかで役立つはず。
「使えるか、使えないか」だけでなく、「知的好奇心」で探究してみることを、お勧めします。
ということで、お時間のあるときに、以下の動画を是非どうぞ。期間限定で、全公開中です。